wonderful opportunity★

■「やまかつ」に見出されたKANの幸福と不幸

M:まぁ、そんな「やまかつ」で最大のヒットとなってしまったKANの「愛は勝つ」。 200万枚突破で、レコード大賞まで取ってしまった。
T:下積みが長かった人だから売れてよかったけれども、KANさんファンとしては複雑だな。
M:わたしの個人的な記憶としては。90年の今井美樹の「retour」ってアルバムでKANの名前を初めて知って。
T:「雨にキッスの花束を」ね。
M:そう。で、ちょっと雑誌とかで調べたら「これから要注目」みたいなことが書いていて、 「野球選手が夢だった」とかも褒めていて、聞こうかなと思っていながらも売れてないからどこにもレンタルされていないし、 ってところに「愛は勝つ」で、「げげげげげ」と思って。
T:ははははは。げげげげでしたか。
M:で、結局、ちゃんと聞かなかった。TSUKASAさんがKANのファンだってのは知っているけれども、 ファン視点でも「愛は勝つ」って微妙でない?
T:まあねぇ、売上もそうだけど歌の内容としてもKANさんにとってはかなりイレギュラーな曲なのよ。
M:でしょ。「丸いお尻が許せない」とか「まゆみ」だっけ。あのあたりが「KAN」なのかなと思うからさ。
T:いやそうよ全く。「愛は勝つ~」って歌いながら「へっへっへっ」て舌出して笑っているというのがKANさんだから。 上半身タキシードで、下半身裸でピアノ弾きながら「愛は勝つ」歌う、みたいのが本質なのよ。
M:なんだそりゃ。
T:いやほんとに(笑)。だから「愛は勝つ」だけの人みたいになっちゃったのはちょっとね。
M:しゃれのめしちゃう感じの人っぽく見えたのに、「最後に愛は勝つ」かよ、で、げげげと当時のわたしは思ったのね。 それで正解だったのね。
T:何が「最後に愛は勝つ」だ、っていう批判はわかるんだけども、そんなこと本人もわかっていますよと敢えて擁護したいです。

■KANと槇原敬之の違い

M:それはマッキーの「どんなときも。」と比べると如実にわかるよね。 ちょうど「愛は勝つ」の下にランクされているけれども。
T:うんそうね。そんな、自分超好き、みたいなポジティヴィティはないわけよ。 ウジウジ細かいこと歌ってるのがKANさんだから。
M:ついでに「どんなときも。」の話もしちゃっていい?あのさ、マッキーが出てきた時に 「愛は勝つ」の二番煎じだって思わなかった?
T:えっ、いや二番煎じとは思わんかったかなぁ。ピアノ弾くし、被ってるとは思ったけれども。 むしろマッキーは大江千里の流れかなあと。
M:あーーーー、なる。ていうか大江とKANと楠瀬は同じ箱に入れていた俺。
T:つかKANとマッキーってそんなにブレイク時期離れていたっけ?
M:「愛は勝つ」の約半年後に「どんなときも。」が1位取っている。
T:あー。いやでも、別になんとも思わなかったかな。当時小学生だし(笑)。ピアノ弾く優しいあんちゃん系かなぁぐらいで。
M:わたしは「どんなとも。」のマッキーに対して、第一印象「二番煎じ」って思ったのね。 でもよくみると「KANはあそこまで気持ち悪い顔していないぞ」「自分抱きしめてないぞ」と。
T:ふはははははは。ちょっと、アップするんですからこれ。
M:あーーーー、そうだ。すっかり忘れていた。
T:まんまでアップしちゃうけどね。
M:つまりは「どんなときも。」を聴いて、KANの魅力がわかったのね。
T:そうかぁ。
M:KANには含羞がある、と。
T:うん、それはめちゃくちゃある。
M:”「愛は勝つ」とかいってるよ俺”と思いながら歌っていて、”でも「愛は勝つ」とかいいたいよなぁ”とも 一方で思っていて。
T:そそそ、まさに。インタビューとか読んだらそんな感じよ。「別にウソじゃないよ、愛は勝ったらいいなあと 思うじゃないですか。とはいえ、インタビュアーに「最後に一言。愛は勝ちますか?」と聴かれたらスリッパで 殴りたいわけで」とか言っている。
M:含羞と居直りが同居していて、それを全部冗談でコーティングしているというか、 その辺がこう、あ、なんか、わかるわ、という。
T:KANにとって含羞っていうのは非常に大きい要素だと思います。
M:「プロポーズ」って曲あったよね、KANに。
T:うん、名曲っす。
M:詞の落とし方とか、あれ、KANだなあ、と思う。
T:「何もないけどぼくのとこにおいで」と。
M:というわけでなぜかKANを大プッシュしている俺がいる。
T:いやぁね、だからまあKANを拾い上げたやまかつのプロデューサーは目ざといなと思うけども、 世間的に「愛は勝つ」の人になっちゃったのは残念です。
M:やまかつの中の人は、ちょっと楽曲のコーディネイトを間違えたよね。本人の素質とちょっとズレがあったな、という。
T:もっとKANっぽいのを使ってくれればねぇ。「REGRETS」とか。
M:だから俺も一瞬マッキーと一緒の目で見たわけで、世間もそんな風に見て、結果彼は一発屋になってしまったわけで。
T:そうねぇ。
M:やっぱりマッキーの自分ダイスキ光線と明らかに素質が・・・
T:マッキーに棘があるなぁさっきから(笑)。
M:え?あ、じゃあ褒めます。
T:ははは。
M:洋楽的なセンスを持ち合わせつつ、とかそういうこと語ればいい?
T:そんな取って付けたように。まあ私は捕まる前のマッキーはそれほど嫌いじゃないですよ。まだ可愛気がある。
M:マッキーはどんどん袋小路に入っていくんだよね。
T:なんかねぇ、だんだん笑ってられなくなってくるというか、無邪気さがなくなっても自分オーライまっしぐらだから、 ちょっとなぁ、というのはある。
M:まだ「どんなときも」の頃は、「浪人生の頃って孤独だよねぇ」とかそんな感じで、かるーーく受け入れられるというか。
T:実際、当時浪人生だったんだもんね(笑)。
M:って、この曲って浪人している自分を叱咤するため作ったって話聞いたことあるよ。違った?
T:いやそんなこと言っていた気がする。
M:そのエピソードに「あぁぁわかるわ」というリスナーは多いだろうな、というのはわかる。
T:自分ガンバ!って感じで、「悩んでる自分が好き」系。
M:「でもがんばるよ、俺」みたいな。ミスチルみたいな。
T:困難に立ち向かう僕、悩んでる自分も自分さ、全て抱きしめよう!ってな感じで。
M:詞の路線は非常に90年代Jポッパーだよね。
T:自分探し系の走りかもな。
M:そのへん、やっぱりKANとは全然素質が違う。自分の周囲をひたすら見つめていて、あんまり相対化できてない、 洒落に出来ないという。だからこそ袋小路に突き進むんだけれども。
T:洋楽ポップスを上手く消化してっていう、作曲とかアレンジの資質は似ているんですけどもねぇ。
M:J-POPにおいて自意識ってやっぱ大きいよね。そこでぱかっと分水嶺ができる。
T:もうそれはね。90年代中盤からはもう、ヒット曲の大半自分探し系なんじゃないかという勢いで。 自分探しというのは早晩どんづまるしかないんだけども。
M:まあ、自我なんてタマネギの皮だからね。本当の自分を探し続けると最後なにもなくなってしまう。 俺って全部皮だったよ、という。
T:まあねぇ。最近はなんかそういう傾向ってちょっと薄れたかなという気もするんですが。
M:一時期と比べるとね。
T:未だにやり続けているミスチルは凄いなと。
M:ミスチルはもう「こういう芸風」ということでいいんでないかなとわたしは思ったりする。
T:もうね、それが桜井さんの味ということで。まあでもその、ほんとにこの時期のマッキーは私は好きよ、 とフォローしておく。好きな曲いっぱいあるし。という感じでいいですか、マッキーは(笑)。言い足りない?
M:や、わたしはマッキーには気まずい言葉しかいえませんから。

■大江千里は槇原敬之に食われた?

T:ふはは。で、ついでだから――ってついでって酷いんだけども、19位に大江千里がいるんですけども。 この人はマッキーの登場でちょっと霞んじゃった感じですね。駄目な弱いボク系、という独占市場をかっさらわれた感じで。
M:大江千里はドラマにやたら出たりとか色々やっていた時期だね。主演映画もあったし。 キャラは被っているけれども、でも大江のほうが私は好きかなぁ。大江のほうが視点が開けていた。
T:おれは声が駄目なんですよねぇ。声がまず第一の障壁になってしまって、聴けない。
M:そういうのってあるよね。わたしはなぜか甲斐よしひろがまったく聞けない。
T:ははは。あのハスキーボイス駄目か。
M:中島みゆきとか萩尾望都とか、自分がリスペクトしている人が甲斐の友達だったりするので、 なんとかきちんと聞こうと何度もトライするけれども、駄目。
T:まあしかし、この「格好悪いふられ方」は好きですよ。かなり身に染みる。
M:声がダメなのに?
T:この曲はなんとか。
M:「なんとか」ってのも、どうよ。
T:ははは。いやだって「♪君のすべてに泣きたくなる~」だよ。最高ですよ。オレも泣きたいし。
M:どうぞ泣いてください。わたしはノーコメントで。
T:まあその、恋愛の話とかしだすとウザイと思うので、一人で浸っておきます。
M:しちゃえしちゃえ。
T:いやなんか大江にかこつけて語ってる自分が嫌だから、やめとく(笑)。

新・年間チャート回顧!1991年 (via toronei)



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